変わった日々の風景

 

 近頃、研究室の共有スペースからペンを滑らせる音が聞こえるようになった。コーヒーを淹れに給湯器までいくとき、視界に入る二人の姿。ひたすら英語と格闘する男と、ひたすら数学に苦戦する女。向かい合って別々のテーブルに着きながら、まるで相手を気にしない。聡輔はカップを持ったまま二人を観察した。

「何やってるんですか?」
声を掛けたのは伊角だった。それに美優と永瀬の顔が上がる。聡輔は大して焦る様子もなく、
「頑張ってるなぁ、と思っただけ」
「あ、そうですか」
 伊角は背を向ける聡輔に首を傾げて、朱夏の隣の椅子に腰を下ろした。永瀬はすでに英語に戻っている。朱夏は聡輔の背を目で追って、
「私、頑張ってるのかな?」
とひとりごちた。
「がんばってるんじゃない?」
オウム返しに答えると、朱夏はムッとしたような顔をした。

こんなの、頑張ってるうちに入らないよ。拗ねたような声で朱夏が言うのを、聡輔は自分の机で聞いていた。

 

-fin-

■あとがき

朱夏は机貰ってますがあえて共有スペースにいる。永瀬に英語を教える為に…。

佐藤総輔(So-suke Satoh)
佐藤朱夏(Shuka Satoh)
永瀬怜治(Reiji Nagase):大学1年、男性、マイペース
伊角恵司(Keiji Isumi)