もやもやする

 

 聡輔と一緒にいる朱夏は、なんだかとってもかわいらしい。そう思うようになったのはいつからだろう。そう感じるからなのか何なのかわからないが、二人でいるのを見かけると堪らなくなる。らしくもなく顔を歪ませて、聡輔に噛み付いてしまいそうだ。もちろん、そんなことしたら朱夏が黙っちゃいないだろうが。
 俺は先生宅の縁側から、下方にある庭で楽しげにたたずむ二人を見ていた。たまたま目を向けたら二人が目に入って、それから動けないでいた。
「眉間にしわ出来てるよ」
「あぁ?」
脇から声をかけてきたのは佐倉だった。気づくなり頭が真っ白になって硬直する。今のは完璧に喧嘩を売る態度だった。
「何見てんの?」
しかし佐倉はさして気にする風でもなく、俺が凝視していたところに目をやった。そこには聡輔と朱夏の代わりに夏井が立っていた。「夏さん見てたの?」と訝しげな顔をされたから、俺は室内に戻りながら
「違ぇよ、ばーか」
と佐倉の肩を小突いた。

 この先、朱夏があんな笑顔を自分に向けることがあるのだろうか。
 馬鹿みたいな考えを払拭するように頭を振った。俺だけが突っ走っては佐倉と朱夏との関係にひびが入る。それはどうしても避けたいことだ。
「あ、安住君、佐藤さんどこにいるか知ってる?」
「あぁ、下にいますよ」
 狭山先生の声に、内心びくりとしながらも、俺は平静を装ってそう言った。なんでも、そろそろ料理の支度を手伝ってほしいそうなのだ。
「俺、呼びますよ」
「お。ありがとう、お願いします」
先生は他にやることがあるのか、玄関に向かって方向を変えた。俺は再び縁側に出て、深呼吸をするように息を吸った。
「朱夏、めし作ってー!」
大声で彼女の名を呼ぶ。少しすっきりした。

 

おまけ

朱「あんたね、人の名前叫ばないでよ!」
安「ああん? いいだろ、別に」
朱「は、恥ずかしいのよっ!」
安「ふん、減るもんじゃねぇだろ」

佐「俺さぁ」
永「ん?」
佐「佐藤さんと安住くんてさ、絶対仲いいと思うんだよね」
永「そう?」
佐「うん。でも、認めないんだよね。あんなに息合ってるのに」
永「所謂ツンデレなんじゃね?」
佐「それ、本人たちの前で言ったら血を見るよ?」

 

-fin-

登場:
安住宏孝(Hirotaka Azumi)
佐藤総輔(So-suke Satoh)
佐藤朱夏(Shuka Satoh)
佐倉和人(Kazuto Sakura)
狭山(Sayama)
夏井陽彦(Haruhiko Natsui):大学2年生、男性
永瀬怜治(Reiji Nagase)