つい、手伝ってる
大学に着き、車を止めた瞬間、キラキラと携帯が鳴る。私は携帯を開きながら車を降りた。ディスプレイには「安住」の文字。通話ボタンを押すと彼の聞き慣れた声が聞こえてきた。
「もしもし、なに?」
私は知らず、いつもより柔らかい声で電話に応えていた。
『あのさ、送ってもらった課題が俺のクラスのと違うんだけど』
「うん、知ってる」
知っていながら送った私も私だが、安住相手だとどうしても悪戯したくなってしまうのだから仕方がない。
暫く沈黙があった後、
『データ構造のページから行けない?』
「データ構造のページなんてあるの?」
あるよ。と安住が言う。うちのクラスが使ってないだけか。
「あー、んー。そういえば、見たことある気がするなぁ。うん、見てみる」
そういえば中間試験の予告メールに載ってたURLをクリックしたらそんなページが出たような気がする。中間試験の情報なんぞちっとも載ってなかったけど。
研究室の扉を開けて中に入る。先輩達に会釈をしながら、自分の机の前に立った。
「あ、そういえばさ。あんた、今どこにいるの?」
『ん? 実家』
「実家ぁ? そっかぁ。わかった。先週の送れば良いんだよね?」
居場所を聞いた瞬間、なんか気分が沈んだけど気にしない。私はメールで送るべき課題の番号を聞き、自分のパソコンをつけた。椅子を引いて座る。
『なに? 俺がいないと寂しい?』
「違うわ! この自意識過剰めっ!」
電話の向こうでニヤニヤ笑っているのが目に浮かんで腹が立った。
「そう言うこというと送んないからね」
それは困る、と全く変わらない声音で言うこの男の考えが私には全く読めない。こういう事は普通、同じクラスのヤツに頼むんじゃないのか?
『送って』
「それが人にものを頼む態度か」
『送ってくださいお願いします』
棒読みも甚だしい。しかし私の手は既に彼のページを開き、データのpdf化までしてしまってる。ここで送ってやらないのは徒労になってしまう。まったく、私は甘い。
「アドレスはさっき送ったヤツで良いんだよね?」
『おぅ』
「わかった。送っとくよ」
『うん。よろしくね』
「うん。じゃ」
「よろしくね」と言われて、少しだけ気分が良くなった。メールで頼まれた課題を送り、私は自分の課題に手をつけたのだった。
-fin-
登場
佐藤朱夏(Shuka Satoh)
安住宏孝(Hirotaka Azumi)
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